エヴァネッセンスの単語本来の意味は…
霧などの蒸気のように、つかのまに消えていくはかなさや消失
アーカンソー州リトルロックで結成されたバンド『エヴァネッセンス』はエイミー・リーの素晴らしいボーカルをはじめとして、叙事詩的でありドラマティック、重く暗いイメージを醸し出しつつもキャッチーなメロディーを兼ね備え、2003年4月 ワインドーアップ・レコードからアルバム『フォールン』でデビュー。
『エヴァネッセンス』というバンドの名前からバンド自体が「突然の消失」的戦略をとるのでは?という捉え方もできますが、彼らは長命に渡る音楽活動を示唆し、これを否定しています。
バンド結成の由来はエイミーとベンが小中学生時代にユース・キャンプで出会ったのがきっかけ。キャンプのリクリエーション・プログラムの中でエイミーがミート・ローフの♪I'd Do Anything For Love をピアノで弾き語りをしていたのを聞いて、ベンがエイミーを誘ったのがはじまり。
ベンはその後始めたバンド活動で「俺たちはあの日以来、常に音楽的関係について信頼しあい、忠誠を保っているよ。それから自分たちが好きな音楽というものについて明確なヴィジョンをもっている」と語っている。
エヴァネッセンスとしての活動が形をなしたのは1990年代の終わりのリトルロックでのこと。当然のように典型的なアメリカ中西部の町ではデスメタルよりもソフトロック、カントリーの方が人気があり、急激に人気を獲得するには至らず…。
それでもエイミーとベンは多彩なアーティスト活動を行っているビヨーク、ダニー・エルフマン、トリ・アモスなどの影響を受けて、ライブで大きく儲けるとはいかないまでも、シングルをリリースして次第に名前が知れ渡っていった。
そんな中カップリングとして7分で仕上げたというゴシックロックナンバー♪Understanding がロック専門のローカルラジオ局で流れまくっていた。これをきっかけにエヴァネッセンスは街中に知れ渡るのだが、バンドはライブができないでいた。 エヴァネッセンッスのメンバーはエイミーとベンだけで、金銭的にもミュージシャンを雇う余裕がなかったからだ。
アルバム『フォールン』はデイヴ・フォートマンのプロデュースのもとロサンゼルスでレコーディング。デビュー・シングルとなる『ブリング・ミー・トゥー・ライフ』ではゲスト・ボーカルで12ストーンズのポール・マッコイも参加。そして映画『デアデビル』で使用されることに。
『ブリング・ミー・トゥー・ライフ』についてベンは次のように語る。「♪Bring Me To Lifeはそれまで感じたことにない感覚にとらわれる、呼び起こされるもの。また曲を聴いたら、あなたが安全だと感じている泡のようなものの中にいることよりもっと大きな世界があることを見つけられるよ」と。
エヴァネッセンスの歌詞では暗闇をまさぐり、愛や絶望についてのものが多い。しかし彼らの放つ基本的なメッセージはポジティブなものであると主張する。
大部分の歌詞を書いているエイミーは「このアルバムやバンドのポイントは悲しみや痛みを感じたり克服することは、決して孤独に一人だけのものではないというのをみんなに知ってもらうというところにある」と語る。
また「感じたり乗り越えたりすることが人生だし人間である。それらは一人ではあり得ないし、みんながそれを経験している」と。
エイミーとベンをサポートするのがギターのジョン・ルコムとドラムのロッキー・グレイ。彼ら4人が集まってアルバム『フォールン』は忘れがたい貴重なアイテムの一つとなった。 ストリングス、重厚なリフ、切ないメロディーに「死にたい」という叫びがあり、アルバムのどの曲も「重さ・深さ」をもちながら、聞いた後に重苦しさが残らない。どれもピュアであっという間の44分なのである。
ベンはこう語る。「俺たちは音楽に対して誠実であり、最近の人気をあらかじめ約束されたようなパックされた音楽たちとは異なる。俺たちはただ、心から音楽を書いてここにいるんだ」と。

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