FUJI ROCK FESTIVAL '03
Evanescence
July 27 2003

     私がエヴァネッセンスの存在を知ってから約1ヶ月半、早くも生のエヴァネッセンスを見るチャンスがやってきた。本国アメリカでのビッグヒットもさることながら、ヨーロッパ、特にイギリスでの人気が凄い。大西洋を挟んだ欧米での人気沸騰によって、ツアーやTV収録のハードスケジュールが組まれる中、それを縫うようにしてこの時期に彼らが日本への来日を果たすことは何とも嬉しい限りだ。FRF(フジロック・フェスティバル)出演の翌日には東京・渋谷での単独ライブ公演が行われることも6月下旬に発表された。エヴァネッセンスを初めて耳にしてから2日後にはwebサイト制作への飛びついていた筆者であるが、同様に、気づいたらFRF(フジッロック・フェスティバル)のチケットを購入していた。これは何としても目にしておかなくては!!と。
     例年にない終わりなき梅雨が前日まで(金・土曜と)雨を降らせていたが、27(日)はみごとに晴れた。  新潟・苗場には午前9時半頃に乗り込んだ。気温23度、天気は晴れ。まだ雲が抜けきってはいないものの、日差しが心地よい。既に会場はキャンプサイトで連日参加している人達とともに、この日乗り込んでいく人で賑わっている。足下は前日までの悪天候を引きずってひどくぬかるんでいる。数多く張り巡らされたテントを横目にキャンパーの苦労と喜びを勝手に想像し、この歳にしてFRFに初めての参加となった私は「音楽」の持つパワーの凄さを目の当たりにしていた。数年前までバンドを組んでライブでドラムを叩き音楽にはどっぷり浸ってた方だとは思うが、20歳を超えたぐらいの学生を主としたあの鬱なるオーラ・パワーの結集を目前にして、ステージ以前にFRFにいい意味でショックを受けていた。

     さてエヴァネッセンスのステージを最前列で見るには…それなら直前のステージから気合いいれていかねばと、映画「バッファロー'66」で有名なヴィンセント・ギャロのステージを見ることに。全くといっていい程存じ上げなかったので申し訳ないのだが、元気いいステージだと想像していたら、そうではなくて、とても独創的な音楽を奏でている。これはエンジンかけづらいかも…と1曲目で面食らっていたのだが、次第に心地よくなってしまった。目をつぶって音楽に身を委ねるうち、頭の中でアメリカ北西部の森林の中を彷徨う姿を想像してみたり、プールで息継ぎをせず潜り泳いでいる姿を想像してみたり…(きっとその場に居合わせた人もこの想像には呆れてしまうだろうが)、ヴィンセント・ワールドに十分誘われてしまった筆者であった。しかしヴィンセントの方はギターのボリュームが思うように大きくならずに、オペさんがハウりながら調整しているうちに集中力を削いでしまって、演奏を途中で切り上げ、引き上げてしまった。ちょっとかわいそうだった。

     いよいよ次はエヴァネッセンスの番だ。インターバルは約40分とのアナウンス。私たちはステージ中央正面に陣取り、最前列には進めず2列目で見ることになったが、これは後に功を奏したと言っていい。1列目ではフェンスに押しつけられて痛い思いをすることになったろう。(自分への慰め?) 前のステージが終わってから10分も経たないうちにステージにDr.のロッキーが現れ、バスドラから順にチューニングを始めた。上手の袖の方ではベンがギターを掻き鳴らしている姿が垣間見れた。ステージではSt.Anger(Metallica)がリピートで流れている。後方もだいぶ人が増えてきたようだ。ステージ上の「ロッキーの存在にみんな気づいていないのかぁ!!!」って思いつつも、ライブがもうすぐ始まると思うと胸が高まる。BGMがBON JOVIに変わりボリュームが上がる。約25分の合間を経て、シンセで織り交ぜられた荘厳たるSEがこだました。
     SEからアルバム1曲目であり大ヒットシングル♪Bring Me To Lifeに続く2ndシングルとなる♪Gonig Underでライブは幕を明ける。メンバーがステージに揃った後にエイミーが現れ、大歓声が沸き起こる。曲の始まりは初めて目にするメンバーの姿を必死に目で追いながら、Bメロ/ブリッジでエイミーの歌声に全身を委ねる。一気にエンジン全開となるサビに辿り着くまでの一瞬、「その瞬間がすぐそこに」って感じれば感じる程、表現できない心地よさを感じる。周囲も静けさと押し合いへし合いの熱気が混じり合いのパワフルなナンバーに身を委ねながら、サビに向けてパワーをため込んでいる。そして迎える" Going Under"(サビ)。観客もメンバーも全開モードでうねりうねって、全身で表現している。

     既にネットでTV音楽番組などエイミーの生の声が聴ける機会に私たちは恵まれ、彼女の歌の上手さはご存じかと思うが、ステージで歌うエイミーの声は、CDで聴いた以上にプレーンでパワフルだ。決して途切れることなく、魂からダイレクトに発せられる純粋さを感じた。これは凄い!!最近よく耳にするアーティストの音源って、CDになった時点で本物より良質なことはままあったりする。しかしエイミーの声を聴くとCDでは抑えられているとしか思えない。それもエイミーは体をくねらせたり、半身を揺さぶったり、腕をつけあげたりと、全身を使って歌いながら楽曲を表現しているのだ。それに負けんとベンやジョン、ウィルも激しく体をうねらせながらプレイしている。一気にフル回転の振り切った状態のまま、♪Hauntedに続く。
     ♪Bring Me To Lifeや♪Going Underがキャッチーなメロディで人の心を掴むとするなら、♪Hauntedはタイトル通り、掴んだ心を離さず取り憑くような、ある種「Evanescence」というバンドのキャラクターを端的に表しているナンバーではないかと思う。Aメロでエイミーの歌声を全身で受け止め、彼らの存在がここに在ることを確認する。アメリカ中南部のアーカンソーから一躍世界に出て、極東日本までやってきたエヴァネッセンス。若干21歳のエイミーをはじめバンドのメンバーはこの日本に来て、ステージに立ち、どんな心境でプレイしていたのだろうか。ステージ前半では見知らぬ国での盛り上がりを心配した不安と緊張のようなものを抱えながらプレイしているようにうかがえた。それはもちろん1曲目の♪Going Underである程度吹き飛ばされたかとは思う。でもまたその初々しさが、曲の合間に見せるエイミーの笑顔がたまらなくエヴァネッセンスへの想いをさらに昇華させる。
     正直なところ、4曲目♪Everybody's Foolあたりからは観客の盛り上がりもフル回転振り切った状態になってて、MOSHx2で、自分の頭上を一体何人通過したのも判らないほどの熱狂ぶりで(ひとえにダイブ目的の輩の方が多いのだろうが…)、記憶は実に曖昧だ。もう賢明に楽曲に乗って同化してってのが精一杯。ここの所の続いた雨空とはうって変わって晴れ間が覗いた青空の下でメンバーは大いに気持ち良くプレイしているのも、壁のない開放感いっぱいの、空へとストレートに突き抜けていくエイミーの歌声もたまらなく、エイミー自身が解き放たれて歌っている姿が目に焼き付いている。様々要素が相乗効果として、各メンバーの表情に充実感が伺えて、会場はさらなる一体感をなし得たのではないだろうか。とかくエイミーが幾度となく発した「Thank you」という言葉が安堵を含んだ重みのあるものに聞こえて、ここに居れることを私は感謝した。また私の目にはベンが(彼は写真などで見る以上にカッコよかったと思う)、エイミーの父なる存在に見えて仕方なかった(笑)。「おおぅ、エイミーもごきげんに歌えて何よりx2」みたいな。ジョンやウィルよりもクールに弾いてたように思う。

     ♪Bring Me To Lifeの時には完全にエンジンの針振り切れグチャグチャ。"Save Me"ってみんなが声張り上げるの精一杯?!一度、サビのエイミー・パートが観客に振られたのだが、Guysには高音も災いして十分なボリュームになりませんでしたな(笑)、大合唱って表現は翌日のAX LIVEの方が適切かな。それよりもライブ最高潮!揉みに揉まれてもう分けわからん状態。天を仰げば酸素が一杯!ってのは助かった。
     ♪Tourniquet〜♪Imaginaryと私の今一番ハマっている曲がまだまだ続くぜ!と言わんばかりに披露される。ちょっと聴けるモード?になるかと言えば、ぜんぜんそうはならず♪BMTLから波はそのままに、エイミーもメンバーもメロディに全身を委ねて動かしまくって、「エヴァネッセンス」らしさという味を出していたのでは?と思う。
     とにかくライブは最高でした!!あの瞬間を言葉で表現しえるのは難しい。違った面から見れば、フジロックそのものの良さというか、ステージを時間々々で区切ってアーティストがライブを行うので、各アーティストは短い時間で準備しなければならず、大げさな装飾はできない、イコール各アーティストの本来持っている力というか純粋な音のパフォーマンスが見られて良かったと思う。無論エヴァネッセンスはド派手なステージセットなんか必要ない、強力なエネルギーと魅力が、ステージを通じて十分に伝わってきました。それにしてもホント晴れて良かった。これだけ盛り上がってメンバーもとてもごきげんそうだったから明日のAXも期待できるな(^^)と確信しました。
     50分弱のライブで全身汗びっしょりになった私はエルヴィス・コステロのライブでまた感動を味わって、深夜午前3:30、家に帰りつき、朝起きてみごとに風邪を引いていたのでありました。

AX LIVE REPORTに続く…


FUJI ROCK FESTIVAL 2003
2003.07.27 at Naeba Ski Resort (Niigata,JPN)

S.E.
1.GOING UNDER
2.HAUNTED
3.TAKING OVER ME
4.EVERYBODY’S FOOL
5.MY LAST BREATH
6.FARTHER AWAY
7.EVEN IN DEATH *1
8.ZERO *2
9.BRING ME TO LIFE *3
10.TOURNIQUET
11.IMAGINARY
12.WHISPER

*1: Even In Deathは自主制作盤「Origin」のナンバー。
*2: ZeroはSmashing Pumpkinsのカバー曲。
*3: ポール・マッコイ(12 stones)がCDアルバムで担当したBring Me To Lifeコーラス部分はジョン(g)がツアーで担当している。


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